Research Note #2: 新型コロナウイルスはマーケットリサーチの需要と供給に影響があるのだろうか?


COVID19
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シントのプラットフォームの示すデータでは、コロナウイルスによる、業界の需要と供給において、現在のところ著しい影響は見られない

業界最大のサンプルエクスチェンジプラットフォームとして、弊社はマーケットリサーチ業界の需要と供給の満ち引きをつぶさに見ることができる特異なポジションにあります。そこで弊社は、日頃マーケットリサーチ業界を支えてくださる、リサーチユーザー、パネルサプライヤー双方の皆さまへ、現在のパンデミックの状況をよりよく理解いただけるように、弊社のデータを共有させて頂こうと思います。

消費者動向における新型コロナウイルスの影響に関する弊社の考察に関しましては、どうかこちら Research Note1: 新型コロナウイルスによる消費者動向の変化のモニタリング をご覧ください。

調査の背景
新型コロナウイルスの拡大と、続いて起こった人々の“ロックダウン”は、世界の経済に悪影響を与えると予想され、この状況がいつまで続くのかわからないということが最大の不安要素です。人々の活動の低下が消費者の消費を低下させており、企業は費用の削減による節減を始めています。そして現在、このウイルスがマーケットリサーチの需要と供給に与える影響についてどうなのか、ということが我々の業界の人々が問う中心題目となっています。

需要と供給:マーケットリサーチの “案件量” に関して
経済学の用語を借りれば、マーケットリサーチの取引には2つのパートがあります。業界の需要側は、ブランドや企業が消費者行動をさらに学びたいという強い願望の表れです。それらの組織が消費者の意見や行動を収集したいと願った単純な結果として我々が需要を計測できるといえます。おそらく主には日用雑貨関連の調査となりますが、動いている案件数と案件ごとのコンプリートサンプルの数によって我々はこれを言い表すことができると言えます。

対して業界の供給側は、今日(こんにち)の業界では、調査依頼者数とその調査協力率は日に日に指標として廃れておりますが、調査協力可能者数でそれは計測することができます。シントでは、アンケート招待メールを基本としたパネルサプライヤーを中心にプラットフォームに抱えておりますが、最近はサプライヤー側のシステム経由で回答者を招待するパネルサプライヤーのパフォーマンスのほうが良いというのが現状です。(その場合の1アンケート回答は、サプライヤーのシステム上で招待されてシントのプラットフォームへ入ってきた1回答者の回答です)つまり結局は、需要側と供給側はアンケート回答依頼が発生する時点でマッチングされた後に、回答サンプルとなる点は変わらないのです。

調査の仮説
業界におけるウイルスの与える影響をスタディするためには、我々は需要と供給の双方の事実に目を向けています。 リサーチャーとしては、それは仮説を立てるのを助け、また (a) 我々はこの状況に対して包括的な視点を持っている (b) 我々は影響を測定できることによる明確な指標を持っているという二つの視点からこの仮説をより確実なものとするのです。

デマンドサイド(需要)に関する仮説
1. 成約案件数が少くなることで、クライアントがマーケティングリサーチ支出を削減したと言えます。
2. 案件数の少なさに加えて、案件ごとのサンプル数の少なさにおいて、クライアントがマーケティングリサーチ支出を削減したと言えます。

サプライサイド(供給)に関する仮説
1. 調査対象者がリサーチ案件への協力により協力的に、もしくはより非協力的になるのは、これらの数字の増加、もしくは減少で言うことができます:

  • サプライヤー側のシステム経由で招待された調査協力者の回答数の低下/上昇
  • Emailによる調査協力依頼数が多いか/少ないか
  • レスポンス率の低下(調査協力者÷調査依頼数)

デマンドサイドとサプライサイドを合わせた仮説
1. コンバージョン率の低下 …コンバージョン率とは、回答完了数÷総回答数であり、その回答数とはアンケートへの回答を試みたものすべてを指す。つまりコンバージョン率とは、調査協力者の調査回答を完了したいという思いの結果なのです。
2. アンケート回答の途中脱落率の増加 …途中脱落率とは、アンケート回答を途中で放棄した人数÷総回答数で示される。途中脱落は、一般的にはアンケート内容においてひどい経験をした結果として発生します。

仮に需要に関する仮説が一面的(例えば、需要が予想外に増大するとは期待しない等)だとしても、供給に関する仮説は二面的になります。言い換えると、それは調査協力の増加または減少のいずれにも説明がつく、有無を言わさぬ理由があると言えるでしょう。供給に関する仮説においては、まず第一に、調査協力者数や総回答数の水準が伸びるか減るかという、極めて本質的なことが当てはまる一方で、コンバージョン率(回答完了数÷総回答数)やレスポンス率(総回答数÷調査依頼数)は常に変わる可能性があるという点に留意しなければならないのです。

デマンドサイドとサプライサイドを合わせた仮説に関しては、その因果関係が不明瞭なのであえて別に挙げています。そのような中で弊社では全体のコンバージョン率に絞っており、それが弊社のプラットフォームの健全性を測る、キーとなる指標だからです。例えば仮に、その案件の質が変ったとしたら(例を挙げると、よりニッチな対象をターゲットにする等)コンバージョンは低下するだろうし、もし、クライアントがより一般的なトレンド理解のために一般対象者寄りの案件を多くするのであれば逆に上昇すると言えます。また弊社では、途中脱落率も以下の理由でとてもよい統計値だと考えています。途中脱落率が高くなったり、低くなったりするのは、対象者が依頼された調査へ協力してくださる許容性を反映すると言えるからです。

但しそれらのいくつかの指標は完璧でない点も忘れてはなりません。例えば、シントプラットフォームにリサーチ案件がすでにある時には、APIの機能をフル活用しているサプライヤーの会員はシントのプラットフォームに自動で送られてきます。したがって、案件が減少した時には調査の回答は減少することが予想されます。その上、このデータセットの特徴としては、案件の請求が行われた30日後に調査協力依頼のデータをアーカイブするという点があります。

最終的に、我々は余計な疑念を避けるためにここでは有意差検定を行っていません。誰も弊社に95%の信頼区間の計算を求めませんし、我々は「目視」という同様に価値があり計算量の少ない方法を使っているのですから。

調査の結果として
我々はこの分析のためにいくつかの国を抽出しました。それらのチャートはPDFファイルとなっており、確認された新型コロナウイルスのケースの毎日の数値とともにグラフ化された様々なメトリックを示しております。また各チャートでは、我々は自信をもって縦軸のラベルを表示しておりません。またいくつかのチャートでは、尺度を新たにしているものもあります。そしてすべてのチャートでは、新型コロナウイルスのケースは右手側の縦値軸に表しております。
以下は図表の一例。アメリカ合衆国における、システム経由で招待された回答数(Programmatic Supply Entries)と調査依頼を受けた回答数(Respondents from Invites)、感染が確認された新型コロナウイルスのケースの比較

以下が年初から3月末日までの調査結果サマリです。

  • フランス/アメリカ/日本
    現在のところそれらしい影響は表れていません。
  • スペイン/イタリア
    メール反応率が多少低下したものの、別アンケート終了後に続けて招待された対象者の回答数が上昇した結果、総回答完了数においては影響が出ておらず、その他の指標でも影響は見られていません。
  • 英国
    全体的にさらに低下傾向が予想されますが、現時点では回答数もメール反応数もわずかながらの低下が見られた程度です。回答完了数も若干下がったか横ばいだった程度に留まった程度、調査協力依頼とそのメールに対する回答完了は、こちらも若干ですが下降傾向にあります。
  • ドイツ
    調査協力者数、回答完了数、案件数のいずれもが低下傾向が出始めています。
  • オーストラリア
    案件数は増えているものの、案件に対する回答完了数は若干低下しています。但し、それ以外の指標は至って通常通りです。
  • 韓国/中国
    明白な悪影響は出ていないという興味深い状況にあります。というのも、両国ではウイルス感染の状況を表した曲線で、収束曲線に入っているにもかからずこのような結果だからです。
  • インド
    それらしい影響は出ていません。調査応諾率が低下している中でも、調査依頼数と調査協力者数は増加しており、調査依頼数の増加は調査協力者数の増加よりも早く成長している状況にあります。

COVID-19 impact tracking
調査結果のPDFダウンロードはこちら

調査の総括
サービス提供中のすべての国で第一四半期の需給に悪影響が及んだという証拠はほとんどありませんが、英国とドイツのおいては若干の減少傾向にあるようです。弊社のビジネスにおいては、対予算比でも、大きく増加した売上昨対比でも、非常に好調な第一四半期を終えたところです。それにも関わらず、4月と5月には案件の中止が発生することが見え始めています。恐らく毎週頭に、この危機的状況下を通じて、弊社のプラットフォームのデータを皆さまに共有させて頂くつもりです。

 


Written by: JD Deitch (COO at Cint)

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